穴が、樹と共に在った時。
樹の芯から外に向かって生える枝を支え
そこに葉を茂らせていた。
葉から養分を芯に向けて送り
根から水分を芯を通して枝に送った。
物質的なエネルギーの放出と吸収。
穴は枝を介して、その通り道だった。
樹が樹でなく木になると
物資的エネルギーを行き来させる役目を終える。
朽ちていく過程のひとつとして、穴は枝を失う。
役目を失った穴は、もの足りず何かを探す。
放出したい何か、吸収したい何かに出逢えば
穴は生き生きと、それらを通す役割を果たすだろう。
ヒトのカタチになることによって
その姿を自分と重ね合わせることができる。
樹の芯と自分自身の芯を、置き換える。
身体の芯、精神の芯。
穴は生かすべき芯と出逢って、働き始めるだろう。

モリダマリ
2012 マカンバ
節穴標本
-六花亭製菓六花文庫第五期入選作品-
2014 スギ・マツ・ヒノキ

木に囲まれた森の中にいても
節の姿は見えない
しかしそこに節は、確かに存在し
役割を果たしている
木を存在させる構成要素には
表に現れており目に見えるものと
表に現れず目に見えないものがある
その全てが機能し関わり合うことで
木はそこに存在している
目に見えないもののうち
ひとつだけでも、もし可視化出来たなら
身近な人や世界が
全く違って見えるかもしれない
見えないものを見ようとする努力で
気づき改め、変わることが
出来るかもしれない
「標本は、その生物の存在を証明し特性を明らかにするための大事な証拠である」Wikipedia
節穴に
ヒカリの
ネックレス

折れた枝は、樹の痛手
樹は、懸命に生命を守るため痛手をかばう
痛手を飲み込むように、成長する幹
その箇所が、抜節
斧を入れると枝が抜け、節には穴が空く
弱みを補うために強くなり
その弱みが抜けたとき、強さだけが残る
誇らしい穴に、ヒカリがさす

風化や劣化など、ものが朽ちていく過程では
軟らかいところから姿を消し硬いところだけが残る
節は後者
物体としては死に近づいているようであり
現れた形はまるで土から生えてきたような形
うまれたてのような、ほっこりと平和な風貌で
春に芽生える三菜のように森で出逢ったら
ついうれしくなるような
摘んで家に持って帰ったら子どもたちが
わぁっと喜ぶような、そんな形だった
残生
-Rot and Borne-

もとはひとつの塊だった両者を木目に沿って割り
接ぎ合わせた。この木目から穴と枝がちょうど分離していることから、この木目を形成した年にこの枝が折れたことが分かる
ブックマッチ
シリーズ
2015 スギ・マツ・ヒノキ

節穴の存在と成り立ちを表したい
「ブックマッチ」の先に「残生」がいて
その先に「fushi」を据えると
節は身軽になった歓びに羽ばたいているようにみえる
相関
2015 マツ

吸収と排出を繰り返し、成長する
伐採され木材となるが、木はこの時点で
生命を失うのだろうか
木材となり、例えば僕の手によって
彫刻や家具に形を変える
その間もその後も
樹の時間は途絶えることなく
続いているのではないだろうか
変態を遂げながらふたたび三度
生命は続くのかもしれない
孵化した蚕が繭を形成し
成虫へと変態を遂げる
姿を変えてふたたび生きる
樹から節が、節として生きるこれから
今はその時をそっと待っている
ふたたび
2015 マツ・スギ・ヒノキ
(山梨県河口湖町)

3.11以降、僕が変われたふり幅が、愛する節を通して可視化できた。
二枚のパネルから成る
それぞれ200余りの節を配置している
一枚のパネルは、2011以前に製作した節たち
もう一枚には、2011以降に製作した節たち
アクセサリーのパーツとして製作していた前者
彫刻として節そのものの形状に従った後者
ぼく
-befor 2011・2015-
2015 マツ・スギ・ヒノキ
(山梨県河口湖町)